ホームページの山里の記憶コーナーに「こんにゃく」をアップした。こんにゃく作りは人によって微妙に違うので、出来るだけ忠実に作り方を記録するようにした。名人の味のポイントはどこにあるのかを見極めないと取材の意味がない。
左喜子さんのこんにゃくは芯まで味が浸みるのが特徴だった。細かい穴が全体に空いている状態になっているということだ。作る前に聞いたところ、アクにソーダを使うのがポイントだと言われた。生芋をミキサーにかける時間もポイントだと言っていた。左喜子さんはミキサーを約2分間回すことにしている。茹でる時間もあまり長くしないようにしている。その見極めがポイントなのだと思う。
食用石灰だけを使って、ミキサーに五分かけ、長い時間茹でると、ツルツルと固い売っているようなこんにゃくになるという。
そんな視点を持って始まった取材だったが、この取材で驚かされたのは左喜子さんの86歳とは思えない機敏な動きと段取りの良さだった。いつも3キロの生芋からこんにゃくを作っている左喜子さん。道具はその為だけに揃って準備されている。
皮を剥くピーラーやナイフ、大きなボウル、大きな鉄瓶、大鍋、詰める箱型すべてが3キロの生芋の量に合わせてある。いつも同じだからいつも同じように出来上がる。旨いこんにゃくがいつでも出来る訳は専用の道具にもあるのではないかと思われた。
頂いてきたこんにゃく3丁を自宅で調理した。三角に切って水に晒し、塩をひとつまみ入れた水で煮立ててアクを抜き、左喜子さんが言う通りに酒とダシの素だけで煮てみた。
ほんのり赤みのある柔らかいこんにゃく煮が出来上がった。細かい穴が多いのか中まで味が浸み込んで旨い煮物になった。こんにゃくだけで煮たのだが、他の野菜や練り物などと煮るともっと旨くなるだろうと思った。