朝4時に目が覚め、すぐに着替えてチェックアウト。車を走らせ、セブンで釣り券と昼飯を買う。雨が降り出した最上白川に期待を高めながら奥に車を走らせる。
堰堤で車を停め、兄はここで入渓。私は下流に歩いてから入渓した。杉林の中、足元からヤマドリの雌が走り出すのにビックリし、巣のありそうな場所を迂回して川に向かう。
最上白川は前に来た時の半分くらいの水量で普通の川になっていた。テンカラ的にはこの方が釣りやすいし、シトシト雨も降っている。これはいい感じで釣りが出来そうだ、……とこの時は思ったのだが、甘くなかった。
魚の気配がまったくない。足元から走る魚もいないし、毛鉤への反応もまったくない。少々焦りを感じて正面の山を見上げると、杉林の伐採現場が延々と続いている。今日は雨だし早朝だから静かだが、晴れた日中はけたたましい音に覆われていそうな場所だった。ユンボやハーベスターの黄色や青色が山の中にふさわしくない毒々しい色として目に飛び込んできた。
「このせいかもしれない…」と思いながらも丁寧にポイントを攻める。しかし、まったく反応がない。
兄のいる第一の堰堤が見えて来た時だった。小さな当たりを逃さずイワナを釣った。これでボウズがなくなったとホッとしながら白川のイワナを眺めて写真を撮った。結局、この一尾だけで兄と合流。釣果を報告すると笑いながら「俺も一匹だよ」と言う。この堰堤でそうなのでは先が思いやられる。
ここからは淵を飛ばすという事で私が先行する。魚の気配がまったくない川で竿を振りながら「次こそは、次こそは…」と思うのだが気分は盛り上がらない。雨が土砂降りになってきて毛鉤が見えないほどになってしまった。
その後気がついたら釣れていたイワナが一尾。それだけで午前中半日の白川が終わった。第3の堰堤まで相当な距離を探ったが結果は出なかった。堰堤の高巻きでつまずき、転び掛けたのをきっかけに脱渓した。こんなところで怪我をしたら大変なことになる。
途中で釣りをしていた兄に声をかけて脱渓を伝える。雨はますます降り続いて合羽の中まで濡れてきた。車に戻って着替えてやっと人心地。兄も戻って来て着替える。話を聞くと兄も同じで一尾の追加だけだったようだ。「それにしても魚の気配がなかった…」という感想もまったく同じだった。他の川に回る気力も無く、そのまま帰路に着いた。
中山平温泉、鳴子温泉を通り抜け、古川インターに着いたのが12時。東北道から北関東道を走って秩父の兄の家に着いたのが5時半。秩父から慣れた道を走って自宅に帰ったのが7時半。全走行距離1733キロの釣り旅が終わった。
一度でいいからやって見たかった兄との東北釣り行脚、やっと実現した釣り旅だったが、結果は渇水で最悪の結果に……。でも、まあ兄が喜んでくれたので良かった。当分の間、話の種になりそうな濃い旅だった。