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Channel: kurooの窓
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三峰山ロープウェイの取材

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 3月12日、暖かく大量の花粉が飛んで、山も霞むような日だった。大滝の大輪に三峰山ロープウェイの取材に行った。取材したのは矢須唯雄さん(78歳)で、すでになくなったロープウェイの話をいろいろ聞かせてもらった。唯雄さんは18歳で秩父電鉄に入社以来40年間、三峰山ロープウェイの駅で勤務し、最後は駅長を務めて退職した人だった。
 ロープウェイ一筋に働いて来た人生だったが、様々な職業を習得するくらい様々な仕事に追われたそうだ。器機の点検・保守はもちろんのこと、ワイヤーの切り詰め。接合、鉄塔の保守・管理、急斜面の線路に伸びる木々の伐採などなど、外部の応援無く全て内部でやらなければならない独立した職場だった。
 
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 三峯講中が盛んだったころは、200人も300人も講中で参拝に来る人々がいた。21人定員の時代は二時間待ち三時間待ちという事態になった。酒を飲んで暴れる人が出たり、割り込む人が出たり、人数をごまかす講中があったりと接客も大変だった。
 三峯神社への物資搬入も大きな仕事だった。酒やビール、時にはセメントや鉄骨などもロープウェイで運んだので、積み下ろし作業も駅員の仕事だった。空き樽や空き瓶も運ぶというなんとも忙しい職場だった。全部駅員がやった。
 
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 埼玉国体の開催を機に二瀬ダムの堤上を通って三峰観光道路の建設が進んだ。ロープウェイの親会社、秩父鉄道も6億円も出資した大事業だった。昭和42年三峰観光道路完成で一気にロープウェイ利用者が激減した。ピーク時に年間34万8千人運んだのが、いきなり7万8千人と五分の一に減ったのだから、秩父鉄道は大誤算だった。その後も利用者は減る一方となり、平成19年12月1日に廃止となった。唯雄さんが退職して7年後の事だった。
 
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 大輪から表参道を少し登ったところにロープウェイ駅の残滓がある。基礎のコンクリートの上からはるか上空の三峰山方向を見やると一筋の線が見える。そこだけ杉林が途切れてまっすぐの道になっている。ロープウェイの線路跡だ。唯雄さんとその急斜面を見上げながらいろいろな話をした。伐採の話、宿直の時に大イワナを釣った話、旧い表参道の話、山駕籠で客をかついで登った話などなど。
 唯雄さんが最後にぽつりと言った「ロープウェイは残しておいて欲しかったなあ…」という言葉が耳に残った。
 
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