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Channel: kurooの窓
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東北釣り三昧

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 17日から19日までの三日間、山形・秋田で釣り三昧の三日間を過ごした。
 加藤さん、イナさんと三人で16日の夜に車で出発。向かったのは山形県の湯殿山。山麓の渓流に到着したのは朝8時。支度をしていたら、すぐに車が一台来た。同じ場所を狙っていた車のようで、未練そうにUターンして帰って行った。三連休は人も多い。
 山岳渓流はいつもより水が少ないそうで、チビイワナしか出なかった。大きなイワナも出たのだが、一つはバラシ、一つは合わせ切れ……。逃げた魚はみなデカイ。
 三段の滝で加藤さんがいい型のイワナを釣ったので、脱渓。川通しに下る。
 
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 その後、周辺の渓流を探釣したのだが釣果なし。3時になったので山を下り、宿周辺に移動して探釣。イナさんが大きなイワナを掛けたが取り込みに失敗。上手の手から水がもれることもある。結局、周辺では釣果なしで宿にチェックイン。
 
 宿は民宿・田麦荘。田麦股の民宿で、昼はそば屋として営業している。田麦股は小説「邂逅の森」の舞台にもなっている場所で、その昔、熊撃ちのマタギが活躍した場所でもある。
 この田麦荘はその昔、庄屋をやっていた家だそうなので、小説の時代にも存在していた家だ。昔の写真や大雪の写真が飾られていて、小説の世界を写真で確認することができた。
 夕食の料理が九品。それが全部旨かった。刺身や海の魚が使われた料理が多く、ここが海に近い事を教えてくれる。鶴岡を通じて運ばれているとのこと。その新鮮さは驚くばかりだった。大満足の料理をおいしいお酒で楽しむ。もう少し魚が釣れれば言うことないのだが…。
 
 二日目は高速を使って三時間かけ、鳥海山麓へとひた走る。加藤さんの知り合いからの情報で、とても良い沢があるとのこと。途中の鳥海山の姿がとても良かった。グルリと回り込みながら変化する鳥海山の姿を楽しんだ。美しい山だ。
 渓流は橋から入渓した。すぐに大きなイワナが釣れた。計ってみたら27センチ。太い雄のイワナだった。これは幸先がいいと勇躍した三人だったが、百メートルも行かないうちに先行者を発見。一気に落ち込む。フライマン二人が先行していた。
 仕方ないので支流へと入るが、ここでも百メートルも行かないうちに4人の先行者を発見し、意気消沈してしまった。
 4人は脱渓したところのようだったので、挨拶して話を聞く。どうやら昨夜からキャンプして朝から釣っていたらしい。上流は濁りが入ってダメ。昨日は埼玉ナンバーの車が停まっていたとのこと。人気渓流の禁漁前最後の連休というのはこういうものだ。魚より人の方が多い。
 
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 結局釣りはあきらめて、今日の宿西木のクリオンを目指す。ナビで3時間半かかると言っている。知らない道をウネウネと走りながら周囲の景色を楽しむ。これはこれで面白い。多分、二度と走らない道なので、いろいろな発見がある。高速道路や幹線道路にはない楽しみがある。土地の生活を感じられる軒先の風情がいい。
 クリオンに着いたのが3時。釣りに向かう二人を送って一人でチェックイン。温泉でゆっくり汗を流す。土砂降りの雨になったので心配したのだが、二人が釣っている場所はさほど降らなかったようだ。夕食には二人が釣ったイワナが山盛りの塩焼きで出た。
 クリオンには高橋さんが来てくれた。一本一万円するというお酒を差し入れてくれた。四人で大いに食べ、飲んで盛り上がる。来年の6月にイベントが予定されているので、来年もここで会おうと約束した。
 
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 三日目がメインイベントで、どうしても行きたかった沢に行く。沢の入り口で下ろしてもらい、ここからは一人で入渓する。6月に来た時には中流に入った。今回は下流に入る。
 杉林を通り抜け、急斜面の木を伝って下る。最後は飛び降りて河原に立つ。さて、武者震いする瞬間が来た。竿を出し、新しい毛鉤をセットする。
 両岸が切り立ち、深い淵がある。差し込む光が暗い淵底を照らす。神秘的な光景だが、毛鉤釣りには厳しい相手だ。しばらく進むと轟音とともに川幅一杯の滝が現れた。美しい滝だ。堰堤とは違う天然の滝。両側にえぐれる深みにはどんな大物が潜んでいるのか…、毛鉤はとても届かない。
 高巻きをするとすぐにまた滝が現れ、大高巻きをする。踏み跡はない。細い木にぶら下がるように再入渓。今度は明るい平瀬が続く。ここで小さなヤマメが出た。イワナも出た。足元から太いイワナが走った。見上げると両岸に圧倒的な高さの巨木が並ぶ。サワグルミ、栃の木、カツラ、そして杉の巨木。なんという景色か。両側の急斜面はシダの群落。沢べりにはミズの群落。絵に描いたような渓流の姿がそこにあった。
 
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 深い瀬にしつこく毛鉤を打っていた。ギラリと光る反応に合わせるとズシリとした手応え。川幅いっぱいに暴れる魚を寄せれば、26センチの太ヤマメ。抱卵したメスだった。写真を撮ってリリースすると弾丸のように深みに消えた。いやあ、いい手応えでいいヤマメが釣れた。鼓動を静めるように深呼吸して改めて周囲を見渡す。
 黄色い木の葉がヒラヒラと舞い落ちてくる。高い木の天井から、どこからともなく舞ってくる。水音はやさしく、足元を流れる。上流の落ち込みに木の間から光が差している。あそこが次のポイントだ。まるで誘われるような景色の変化。
 誰もいない天国のような渓流で釣りをする幸せ。この最高の気分をどう表現したらいいだろうか。遡行しているだけで、まるで自分が映画の主人公なのではないかという錯覚すら覚える。こんな素晴らしい渓流があったのだ。
 
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 細くて深い急流があった。その脇の流れが巻く場所に毛鉤を打った。大きな手応えでかかったのは先ほどのヤマメより大きいヤマメ。寄せようとしたのだが、流れが急で、さらにそいつはその流れを矢のように下った。あっという間に竿が伸び、上げようとしたらふっと外れた。毛鉤を見るとフックが伸びていた。
 こういう奴がいるから楽しい。あいつは来年までいるはずだ。来年の楽しみにしよう。魚に負けることも釣りの醍醐味だ。
 
 渓畔林の美しい流れに毛鉤を振る。8寸級のイワナがぽつぽつ釣れる。深い釜の縁に定位していたイワナは深い水の中で尺イワナに見えた。しつこく毛鉤を流してやっと釣ったイワナを計ってみたら26センチだった。水の中ではイワナが大きく見えることがわかった。
 巨木の渓畔林が続く。なんて気分のいい渓流だろうか。今まで何百という渓流を釣ってきたが、この渓流が一番美しいと思う。
 
 今年は本当に良い釣りが出来た一年だった。春の釣りから大物が釣れ続いた。夏には念願の尺ヤマメを釣った。そして、この渓を発見した。
 充実した一年の釣りを最高の渓でふり返る。なんて贅沢なことだろうか。ここで釣りが出来たら、何匹釣ったとか関係ない。魚が反応してくれるだけでいい。来年もまた通いたい。
 
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 満足の釣りを終えて脱渓するために急斜面を登った。藪をかき分け、木を頼りに登っていたら、前方からガサガサという音がする。「熊か!?」と思ってギョッとした。じっと止まって、よく見たら人間だった。
 「ああ〜〜よかった、熊かと思った」と二人で言い合う。アケビを探していた地元のおじさんが、愛嬌のある顔をクシャクシャにして笑っていた。
 「釣れたけ?」「10くらい」「おらもだ、こっからへえっただぃ。魚は? 」「全部リリース」「ええ〜勿体ねぇ。ほんだらこれさ持ってけ…」と持っていたアケビを差し出す。遠慮したのだが、おじさんは「まだいくらでもあっから、ほれ、持ってけ」と立派なアケビを両手で渡してくれた。ありがとうと遠慮なくいただいて林道に上がって帰路に着く。
 
 約束の時間に回収してもらいクリオンに帰る。イナさんと加藤さんもそれなりに釣れたようだ。クリオンの温泉に浸かりながら三日間を回想する。いろいろあった三日間だった。
 なんと贅沢で豪華な三日間だったことか。期待・遡行・疲労・落胆・感激・驚き・感謝・ご馳走・銘酒・温泉・再生……釣りの全ての要素が詰まった三日間だった。
 加藤さんとイナさんに感謝。来年もこんな釣り旅ができますように。
 
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