9月9日、小鹿野町の三島にナス佃煮の取材に行った。
取材したのは丸山ヒデ子さん(76歳)だった。ヒデ子さんは合角(かっかく)の出身で、合角ダムの建設で下小鹿野に移転してきた人だった。
JA婦人部の仕事をしていた関係で、夏になるとナスやキュウリを頂くことが多かった。その大量のナスやキュウリを美味しく食べるために佃煮を作りはじめたのだという。
作った佃煮は煮沸したビンに詰めて知り合いに配って喜ばれている。
ヒデ子さんの佃煮はナス10個を半分に切って120グラムの塩をすり込んでカメに三日間漬け込む事から始まる。水が出たナスを塩抜きのため、ひと晩水にさらして塩抜きをする。
薄く刻んで水気をしっかりと絞る。それを醤油・みりん・砂糖・酢・酒で煮詰める。水気がなくなったら火を止めて、生姜の千切り・塩昆布・ちりめんじゃこ・ゴマを丁寧に混ぜる。冷めれば出来上がり。
言葉で書くと簡単だが、味付けや混ぜる順番や温度など、ずっと作って来た人ならではの工夫が見られた。出来上がった佃煮は長く保存も出来る。甘辛い味の奥から生姜の香り、じゃこの歯ごたえ、ゴマの味が噛んでいるうちに出て来る。ご飯にこれがあれば満足という佃煮だった。これなら誰でも喜んでくれるはずだ。
ヒデ子さんは「えびし」作りの名人として新聞やテレビにも取り上げられ、有名な人だった。えびしは倉尾地方に伝わる郷土料理で、結婚式のお膳に欠かせない料理だった。今では作る人も少なくなり、食べる機会もなくなっている。
ヒデ子さんが婦人部の会合などに作って持ち込むとみんな喜んでくれるという。
えびし以外でも様々な料理を工夫するのが好きだというヒデ子さん。苦労してきた人生だったが、今が一番幸せで怖いくらいだと笑っていた。
ヒデ子さんの取材で第五巻の34人目が終わった。絵を描き上げればあと一人で35人となり、山里の記憶第五巻の作成に入ることが出来る。
さて、もうひと頑張りだ。