5/17 帰れない山 (4.5)
イタリアの作家の世界的ベストセラー小説を映画化し、第75回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した大人の青春映画。予告編の山の映像が素晴らしかったので池袋シネリーブルに見に行った。
山育ちのブルーノとトリノ育ちのピエトロの友情を描いている。とにかく舞台のイタリア、モンテローザ山麓の風景が雄大で素晴らしい。二人の友情は様々な曲折を経て、まるであざなえる縄のごとくに禍福が交錯して行く。
少年時代の二人が遊ぶ山の景色が素晴らしい。登山家としてのピエトロの父も味があって良かった。大人になった二人は対照的な成長を遂げて行くが、父親の死後再会を果たす。二人ともヒゲ面で一瞬どっちかわからなかった。父親とブルーノが約束した家の再建が二人を急速に近づける。山小屋を建てながら子供時代の友情を思い出し、友情を深めて行く。
山小屋が出来上がってから二人の生活は大きな変化を見せる。ピエトロの恋人だったラーラがブルーノの元に走り、山で暮らすようになる。ピエトロは自分が何者であるかを求め世界に旅をする。禍福はあざなえる縄のように二人を翻弄する。ラーラが絡む事で青春映画から大人の映画に変化して、苦い経験を味わう。やがてブルーノの山での生活は破綻して、ラーラは子供と共にトリノに戻る。ラーラは言う「愛は急に冷める時と、ゆっくり冷める時がある」ピエトロは何も答えない。友情は愛情に勝るものなのかを試される。また、ブルーノは全てを山に賭ける人生を選択をし、最後は山で死ぬ。
とにかく山の景色が雄大で素晴らしい映画だった。内容はとても長大で、長編小説を映画化したものだと言うことが良く分かる。何人もの人生を丁寧に描いており、見る人の立場により、誰かに共感することができる映画になっている。自分も山が好きだし、友人に山の好きな人も多い。ブルーノが都会での仕事を拒否し、山で生きる選択をしたことは間違っていないと思う。
文学作品としては良いのだと思うが、映画としてのカタルシスは少し欠ける。ピエトロが最後にネパールで自分の居場所を見つけることで映画は終わるが、なんとなく取って付けたようで不自然だった。友情を前面に出して終わらせる方法もあったと思うが・・
モンテローザの山の景色を見るだけでもこの映画の価値はある。とにかく素晴らしかった。