3月21日、練馬区美術館で開催されている「香月泰男展」を見に行った。生誕110年を記念して大々的に企画された作品展だ。
太平洋戦争とシベリア抑留の体験を描いたシベリア・シリーズにより、戦後美術史に大きな足跡を残した香月泰男(1911-74)の画業の全容をたどる回顧展。特にシベリア抑留の体験をもとに描いたシベリア・シリーズは鬼気迫る迫力で言葉を失う作品ばかりだった。
愚かな暴力と悲惨な戦争の記録は、今現在のウクライナ戦争を思い起こさせる。抑留の厳しさ・辛さはウクライナから拉致された人々の行く末を暗示させる。太平洋戦争のソ連と今のロシアが重なり、暗澹たる気分になる。
画家の記憶だけで描かれた黒一色の心象風景は、戦争がいかに愚かで悲惨であるかを克明に伝えてくれる。この時期にこの絵と出会えたのは決して偶然ではないような気がした。
生誕110年 香月泰男展 3月27日まで。西武池袋線・中村橋駅前 練馬区美術館にて開催中。